『また来ようね。』
昨日から母が泊まりで遊びに来ている。『いつまで足腰の自由がきくか分からないから。』そんな事を母はもう何年も前から言っている。帰省した息子達と出かける際にも『これが最後のドライブかな、お婆ちゃんもう年だし。』と真顔で言うから、いつも孫には『それ、この前も言ってたよ。』と笑われる。今年の花火は一緒に行けなかったから、今日は電車で奈良まで行くことにした。長い間電車に揺られて、のんびり過ごすのも良かった。奈良について、母は『大仏さまの所に行く前にはまず公園の鹿にお煎餅をあげないとね。』と、出店で買ったお煎餅を1枚ずつ取り出しては、鹿とご挨拶する。私はその間、次男と夏に来た時とは少し違う景色を楽しんだ。しばらくしてお煎餅がなくなったのでいざ、東大寺へ。中に入ると意外とひんやりとしていて、教科書で見たままの大仏さまが私たちを迎えてくださった。母は『修学旅行の時に潜った穴はもっと大きかったのに。』と不思議がり、大仏様の周りを行ったり来たりしていた。そうかと思えば、もう何十年も前のことを私に話ながら満足そうでもあった。その後も大仏さまに見送られながら、『帰りにも鹿にお煎餅をあげないとね。』と、母の計画は尽きなかった。
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